まるで落語の小ばなしのような短い笑い話を二話組み合わせた、このホームページの中でもめずらしいお話です。えらいだけで世の中のことを知らない「との様」がとった、びっくりぎょうてんな行動とは?
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との様と下ごえ
ある所のとの様が、りょう地を見回りに出られました。お百しょうさんたちが、畑で働いて、下ごえを野つぼから出しては、作っている菜(な)や大根にかけていました。「ありゃあ、何をしとるのか。」と問われましたので、おそばの者は、「あれは、金ぴと申しまして、人間のくそや小便をそのままでは強うござりますゆえ、いったん野つぼでくさらして畑にかけるのです。そうすると、野菜物がおいしく食べられるのでござります、はい。」と申し上げますと、とのさまは、「あんなものをかけているんか。きたないいことじゃ。以後よの食料の野菜にはかけんようにして作れ。」と言われました。
その後、との様のめし上がる野菜類には、下ごえをかけずに作ったのを差し上げました。「どうもいつものようなうまさはこの葉っぱにはないが、いかがいたしたか。」
とのお声に、「これは下ごえをかけるなとのおおせなので。」と言うと、「じゃ、こうまずいのなら、かけて来てくれ。」とわんぐるめつき出したと。
との様と魚
との様がありました。との様は、焼いたタイをご飯のおかずにめし上がっていました。ところが、かた身を食べてしまって、「魚のお代わりを持て。」と言いました。家来はこまってしまいましたが、茶ぼうずが、「かしこまりました。」と、その皿を持ってろうかに出て、魚をひっくり返して、「さあ、どうぞ。」と出しました。との様はもうかた身のあることを知らなかったからです。
何もじょうしきのない者を、じゃから「おとの様」と言うんじゃよ。
『日本むかし話記録6 岡山県御津郡むかし話集』(発行 株式会社三省堂)より
編者 柳田 國男
採録者 今村 勝臣(敬称略)
ポイント
2つのお話は、いずれもえらい人が当たり前のことを知らないことを笑ったものです。『との様と下ごえ』は、今では安全でおいしい野菜づくりの方法として見直されている「ゆうきのう法」のむかしのやり方についてのお話です。『との様と魚』は、食べものはきちんと食べのこしをせずに食べるのが当たり前だというお話です。
よもやま民話にまつわるエピソード
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岡山県『との様と下ごえ / との様と魚』について
このお話の編者・柳田國男は「日本民俗学の父」と呼ばれていて、日本の民話について研究をした第一人者です。








