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哀しみ おきたのつる

沖田のツル

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ある男が鉄ぽうでツルをしとめました。それから一年後、男がまたツルをしとめたその時、ツルのつばさからポトリと落ちたものは、なんと一年前にツルをしとめた時の...。ツルの思いにかなしくなるほどむねをうたれるお話です。

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神農 直隆(かみの なおたか)
かたりべ
神農 直隆さん
再生時間
4分14秒

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山口県 沖田のツル

 今からおよそ百三十年前、宇部村(うべむら)に岡又十郎(おかまたじゅうろう)という若さむらいがいた。又十郎は毛利藩(もうりはん)福原元僴(ふくはらもとたけ)の家来で、大鳥方(おおとりかた)という役目であった。大鳥方というのは、毎日、野山をかけめぐって、鳥やけものをとらえる役目だ。

 ある年の秋のくれのことだ。
― 今日はどうしたというのだ。鳥の一羽、けもの一ぴきとれない
又十郎は少し気をおとして、家路についた。秋は日ぐれがはやい。沖田まで来ると、夕もやのかかった田の中に白いものが動いている。目をすかしてみると、それは二羽のツルだった。一羽は、もう一羽よりずっとからだが大きい。
― しめしめ。これでやっときょうの仕事ができた
又十郎は鉄ぽうをかまえて、ズドンと一発うった。ぱたっと一羽のツルがたおれた。小さいツルは、おどろいて空に飛び上がった。
― ようし、とのもきっとお喜びになるぞ
かけていってツルをひらいあげると、どうしたことか首がない。
― これはこまった。首なしの鳥はえんぎがわるい。これではとのにさしあげることもできない
又十郎はそこらあたりを、手さぐりでさがした。けれども、首はとうとうさがしだすことはできなかった。又十郎はがっかりして、首のないツルをぶらさげてわが家に帰った。

 それから一年たった。又十郎はいつものようにえものをもとめて野山をかけまわったあと、沖田までやってきた。時こくもちょうど去年と同じころだった。ちち色の夕もやが野や田畑の上にかかっている。
― 去年も同じだったな
ふとそう思って、なにげなく田のほうを見ると、あのときと同じところに、ツルがいるではないか。こんどは一羽だ。又十郎は自分の目をうたがった。目をこすって、もう一度見た。まちがいない。ツルだ。
― ようし、こんどは足をねらってやろう
又十郎はねらいをさだめてひきがねをひいた。ねらいたがわず、ツルはぱたりとその場にたおれた。又十郎はゆっくりと近づいていって、ツルを拾い上げた。ぽろりと落ちるものがあった。見ると、一本のくだのようだ。手にとって、又十郎は、「あっ。」とさけんだ。それはツルの首であった。せすじを冷たいものがすべり落ちた。
― さては、二羽のツルはめおとであったか
かわいそうなことをしてしまった。又十郎は、いまうたれたツルが、夫の首をつばさにだいてずっとくらしてきたことに気づいた。

 そのあくる日、又十郎はとのさまのお役ごめんを申し出た。その後まもなく、山深い万倉(まぐら)の里で百しょうをしている又十郎のすがたが見られたという。


「山口の伝説」(株式会社日本標準)より
協力/山口県小学校教育研究会国語部

さし絵
きょうこさん

ことば

毛利藩(もうりはん)

むかし中国地方をおさめていたとの様の領地

ねらいたがわず

ねらったとおりに

めおと

ふうふ

お役ごめん

役をやめること

万倉(まぐら)の里

今の山陽小野田市(さんよおのだし)万倉

ポイント

動物たちにも、わたしたちと同じように家族がいます。そしてわたしたちと同じように、それぞれの動物にとっても家族は大切なものです。今、わたしたち人間によって自然がこわされていますが、それが動物たちの家族をかなしませていることについて考えてみましょう。


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