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哀しみ ちょうじゃとうしいし

長者と牛石

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いっしょうけんめい働いてお金持ちになったある男がいました。しかしそれからというもの、お金を使うことばかりにむちゅうになってしまいました。そのせいで、かっていた大切な牛がしだいに弱っていくことに男は気がつきません。やがてその男の牛は...。

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鈴木 万由香(すずき まゆこ)
かたりべ
鈴木 万由香さん
再生時間
4分17秒

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印刷用データ(PDF)

茨城県 長者と牛石

 むかし、三美村(みよしむら)に清兵衛(せいべえ)というわか者がいました。たいそうな働き者で、村の人たちがみんな、「清兵衛さんはよく働いてえれえもんだ」とほめるほどでした。そのかいあって、清兵衛さんはお金がたまり、「長者」と言われるまでになったのです。清兵衛さんは長者になると、道楽を始めました。それは、家のふしんと庭つくりなのです。
 りっぱな家なのに、毎日大工や左官やにわしを出入りさせていました。近所の人たちが、長者の家に行くと、だれも、「いやあ、りっぱな家だ」「すばらしい庭だ」と、ただびっくりするばかりです。長者は、みんなにほめられるのがうれしくてたまりません。さらにめずしい石や、変わった木を運びこみました。
 それを運ぶのは、ずっと前から長者の家にかっていた一頭の牛でした。牛はもくもくと働き、長者の家がこんなにとみ栄えたのも、一つにはこの牛のおかげだったのです。しかし、その牛もだんだん年をとって弱っていきました。長者はそれに気づきません。家や庭をつくるのにむちゅうだったからです。
「もっと大きな石を持ってきてくれ」「もっと大きな木が欲しい」と、山から運ばせました。けわしい山道を牛は毎日、毎日運んだのです。那珂川(なかがわ)からじゃりや小石を荷車に積んで運ぶこともありました。道もないようなところを年とった牛は、弱った体の力をふりしぼって運んだのです。

 ある日のことです。下男が長者のところへあわててかけこんできました。「だんなさま、大変です。牛めが弱って死にかかっています」長者はびっくりしました。牛のことなんか、一度も考えてみたこともなかったからです。
 死にかかっているというので牛小屋に行ってみました。長者は小屋を見てびっくりし、「何てひどい小屋だ」と、思わず声を出しました。牛に近づいて見ると、もう死んでいるではありませんか。長者は、はらはらとなみだを流し、「あんなによく働いてくれたのに、わしはこの牛に何もしてやらなかった」と、牛にわびました。そして、「手あつくほうむってやろう」と思いました。

 ねんごろにほうむったあと、村人にたのみ、牛の形をした大きな石を見つけてもらいました。はかの近くにその牛石を置き、長者は毎日、お参りしてくようをしました。そして、家を建てかえたり庭をつくったりすることをぷっつりと止めました。やがて長者もなくなり、あのりっぱだった家も一代でつぶれてしまいました。村人たちは、「ぜいたくな家を建てると、牛石のたたりがある」と、ながく言い伝えたということです。この牛石は、三美から野口に通ずるきゅう街道わきに、今も残っています。



「いばらきのむかし話」(茨城教科書販売株式会社)より
作/藤田 稔(茨城民俗学会顧問)(敬称略)

さし絵
きょうこさん

ことば

三美村(みよしむら)

今の常陸大宮市(ひたちおおみやし)三美

道楽

遊びやしゅみに、お金をたくさん使うこと

ふしん

建ちく工事

左官

かべをぬる仕事をする人

にわし

にわを作る仕事をする人

下男(げなん)

下働きの男

ほおむって

(→ほおむる)おそうしきをあげる

ねんごろに

まごころをこめて

くよう

死者のれいにおそなえ物をささげること

野口

常陸大宮市内の地名

ポイント

お金をたくさんかせいだ時、じぶんのことだけを考えて使っていると、そのかげで大切なものをぎせいにしていることに気がつかなくなってしまいます。このお話では牛にたとえられていますが、それが家ぞくや友だち、あるいは自然や地球である場合もあるのです。


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