年のくれになると、北アルプスのふもとにある村に、不思議なとっくりを持って酒を買いに来るおぼうさんがいました。今でも春の雪どけ時期になると山はだにあらわれるという、そのおぼうさんの正体にせまります。
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信州安曇野(あずみの)からは、西に高い山々が見えます。その中で、三角形が二つ横に重なったような山が常念岳(じょうねんだけ)です。この山には次のような話が伝わっています。
むかし、常念岳のふもとにあった村では、一年のくれに市が開かれました。すると必ず酒を買いにくるおぼうさんがいました。
ある年のくれ、おぼうさんは酒屋の店先に立ち、「このとっくりに酒を二しょう入れておくんなさい」と言いました。ところが、酒屋の人がとっくりを見ると、五合ぐらいしか入りそうにありません。「こんな小さいとっくりに、二しょうなんて入るわけがない」と、店の人が言っても、「そんなことはない。きっと入るから入れてください」と言いはります。
店の人は試しにますではかりながら入れてみました。すると、おどろいたことに、二しょうの酒が入ったのです。その後もおぼうさんはときどきあらわれてはお酒を買っていきました。不思議なことにおぼうさんが持ってくるとっくりには、おぼうさんが三しょうと言えば三しょう、五しょうと言えば五しょうの酒が入ったのです。
ある年、おぼうさんは酒代の代金の代わりに二本の松を店の人に手わたしました。「これを神だなにかざれば、きっと商売はんじょうしますぞ」と言いながら。
店の人はおぼうさんの言うとおり、正月をむかえるための注連(しめ)かざりといっしょに松を神だなにかざりました。するとその年のくれも正月も、この酒屋は大はんじょうしました。
春が来たころ、村の人たちは「あのおぼうさんはだれだったのだろう。きっと常念岳に住む常念坊じゃないだろうか」とうわさしあっていました。
村の人たちが常念岳のおぼうさんと思ったのには理由がありました。春になって常念岳の雪がとけ始めると、とっくりを持ったおぼうさんのすがたが、雪形になって見えたからです。
その後、おぼうさんは村にすがたを見せなくなりました。でも、このあたりの家では、正月になると神だなの両がわにとっくりを立てて、松をかざるようになりましたとさ。
ポイント
最近、必要な量を量ってびんなどに入れて売ってくれる量り売りをしてくれるお店がふえてきましたが、むかしはこの話のように、とっくりを持ってお酒を買いに行くのが当たり前でした。常念坊のような不思議なとっくりはないけれど、ごみをへらせる量り売りはぜひ利用してみたいですね。また、このお話は雪形についてもふれられています。「雪形があらわれると田植えの時期」など、季節の目安になっていたようです。自然と上手につきあっていたむかしの人から学べることはたくさんあります。








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