小さなミミズたちの社会を、私たち人間のサイズに当てはめて作られたおもしろいお話です。いつの間にかたくさんのミミズたちが生活するようになり、食べものがなくなりそうなことに気がついたみみずたち。食べるものがなくなったら生きていけません。いったいどうするのでしょうか。
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那覇港(なはこう)の近くに、奥武山(おーぬやま)という小さな島があります。そこにおきなわ中のミミズが住んでいました。
十五夜の明月が、はなれ小島の緑の木々の葉を照らして、光がぬれていました。
ミミズたちは、月光にうかれて、見晴らしのよい高台に集まって、月見の酒もりを始めました。
歌ったり、おどったりして、どんちゃんさわぎをしているときに、一ぴきの年よりのミミズだけは、遠くはなれた木の下で、何が悲しいのか、しくしくと泣いていました。
わかいミミズが、それをみつけて、ふしぎそうにたずねました。
「おじいさんは、こんな美しい十五夜の月見のうたげに、なにが悲しくて、泣いておられるのですか」
おじいさんのミミズは、泣くのをやめて、うで組みをしながら、ぼそぼそと語りました。
「わかいおまえたちは、何も知らずに、歌ったり、おどったりして、はしゃいでいるが、わしは心配で、じっとしておれないのだ。わしのわかいときには、この小島のミミズは、十万びき足らずであったが、今では五十万びきにふえている。この分では今に百万びきにふえるだろう。そうすると、この小島の食りょうの土がなくなる。みんなうえ死にするよりほかにあるまい。それを思うと悲しくて、悲しくてたまらないのだ」
と語りおわって、また泣きだしました。
わかいミミズも、おそろしくなって、大きな声で、わあッと泣きさけびました。
どんちゃんさわぎをしていた、ほかのミミズたちも、そのわけをきいて、急におそろしくなって、声をそろえて、わあ、わあと泣きさけびました
海岸べりの大きな木の根っこには、月見で夜ふかしをしたハブが、今しがた、ぐっすりとねむったばかりなのに、急に川が流れてきて、そのいきおいでハブは海に流されてしまいました。
それでもハブは、水泳が達者だったので、あっぷ、あっぷしながら、ようやく岸に泳ぎつきました。
「はてな。こんな十五夜の明月だというのに、どこから急に水が出て川になったのだろう」
ハブは、すいげん地をたしかめるために、川の流れをよけて、高台の方へ行ってみました。すると、そこには五十万びきのミミズが、泣いていました。そのなみだが川になっていたのです。
「こらッ、やろうども。なんだって泣いているんだ。おまえたちのなみだの川で、おれは海に流されて、すんでのことにおぼれ死ぬところだった」
ハブはかま首をもたげ、赤いしたをなめずりながら、かんかんになっておこりました。
「ハブさま。そのわけをきいてください」
おじいさんのミミズは、この小島にミミズがふえて、食りょうの土がなくなって、ミミズの種ぞくがが死することを、なみだながらに話しました。
「うへっへっへっ。いどの中のかわず大海を知らずとは、おまえたちのことだな。土はこの島ばかりにあると思っているのか。ばかなやつらだ。対岸に見える渡地(わたんじ)に行ってみろ。広々としておいしい土がいくらでもあるぞ。世界中いたる所に土はあるのだ」
ハブは、そういってねどこに帰りました。
「これは初耳じゃ。ではぜんは急げというから、わかいもののうちから、渡地の土地を調べてこい」
おじいさんのミミズの命令で、元気のあるミミズが十ぴきえらばれて、対岸の渡地の土をちょうさするために出かけました。
ふねは福木の葉です。それにニひきずつ乗って、月光のくだけた波にゆられながら、渡地に着いたのは、よく日のおひるごろでした。
「なるほど。ここの土はおいしいぞ」
「それにいくらでもある」
ミミズたちは、おいしい土で、お昼のご飯を、たらふくごちそうになりました。
そのほうこくをうけた奥武山のミミズたちは、福木の葉の舟に乗って、渡地に大移動をしました。
それから、沖縄の土のあるところには、ミミズが住むようになったということです。
協力/伊波 達也(敬称略)
ことば
- いどの中のかわず大海を知らず
井戸の中にいるカエルは海のことを知らないことから転じて、小さな世界に閉じこもっているものは、外の大きな世界を知らないという意味。
- 奥武山(おーぬやま)
今は「おうのやま」と言われる
- 明月(めいげつ)
清くすみわたった月
- 酒もり
人々が集まり酒をくみ交わしてたがいに楽しむこと
- どんちゃんさわぎ
酒を飲むなどして大ぜいがやかましくさわぐこと
- うたげ
酒もり
- かま首
かまのように曲がった形の首、主としてヘビなどがこうげきのさいに持ち上げた首
- かわず
カエル
- 渡地(わたんじ)
沖縄県の地名
- ぜんは急げ
良いことは先にやった方がいい
- 福木(ふくぎ)
オトギリソウ科の高木 沖縄では風よけの目的で生けがきに使う
ポイント
このミミズたちは無事に、食べもののある新しい場所を見つけることができました。しかし、今この地球では、人口がどんどんとふえ、その一方で十分な食べものを食べられる人ばかりではありません。このままだとわたしたち人間はどうなってしまうのか、そうぞうしてみましょう。








