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笑顔 たいぞうとよきち

大造と与吉

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ある山の西側に住んでいる男と東側に住んでいる男がいました。どちらの男も、里の人びとのためにいっしょうけんめい働いていましたが、ふしぎなことにこの二人がいっしょにいるところをだれも見たことがありません。そんな時この里に、ある大ピンチがやってきます。そこで人びとは初めて二人がいっしょにいるところを見つけるのですが、その時の二人とは...!

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鈴木 万由香(すずき まゆこ)
かたりべ
鈴木 万由香さん
再生時間
5分10秒

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徳島県 大造と与吉

 神山町(かみやまちょう)鬼籠野字元山(おろのあざもとやま)の立岩山(たていわやま)は、たかの羽根を広げたように、どかっとすわっています。西のつばさが大造の谷、東のつばさを与吉の谷とよんで、今もしんぴ的な伝説が残っています。

 大造は西の大峯(おおみね)、与吉は東の砂口辺(さこべ)で、年月を送っていました。この山男たちがいつ、どこから来たのか、里の人たちは知らなかった。体かくのりっぱな男を大造(たいぞう)さん、小がらな男を与吉(よきち)さんとよんでいました。木を切って炭を焼き、山を切り開いて田を作り、作った米や木炭は、里の方へもってきて塩やたまごなどと交かんして、一部は、生活にこまっている人々に分けてやり、病人には薬草を教えたり、開こんや米の作り方などの話をして、急いで山へ帰っていきます。何かをたのめば、必ずよく朝までにとどけるぎりの強い二人でした。大造さんは大峯を、与吉さんは奥野(おくの)を切り開いているのか、木を切る音や石ころを転がす音が里の方へも、ときどき聞こえてきます。

 ふしぎなことに、大造と与吉がいっしょにいるのを、里の人は見たことがありません。与吉のことを話しかけると、大造はすぐ帰ってしまいます。与吉も同じことです。大造が白い炭を焼けば、与吉は黒い炭を焼き、大造が白ざさを作れば、与吉は黒ざさを作っていました。まったくおかしな話で、大造が、立岩山に白い大蛇(だいじゃ)がおると言えば、よく日は与吉が、黒の大蛇がおると言い出しました。白か黒の大蛇は立岩山の神様のお使いだということは、二人とも同じことです。
 ある年、つゆ時になってもカラつゆで、大造の谷も、与吉の谷もひ上がってしまって、イネも草も木もかれだしました。実に百日あまりの大かんばつに、力つきた人々は、立岩山で21日間の雨ごいのおいのりを始めました。おいのりも、すでに20日を過ぎて、明日は結願(けつがん)だというのに、雨はふろうともせず、人々につかれとあせりのかげが見えだしました。神もほとけも無いものかと、大先達(だいせんたつ)がつぶやきました。

 こんなときに、みなに交じっていっしょに雨ごいをしていた、大造と与吉のすがたが見えません。朝は与吉が見え、夕方に大造が見えていましたが、昼の間は見えません。おいのりのおきてを彼らはやぶった、と人々は思いました。

 おいのりを始めてから21日目の午後のことです。雲ひとつなかった大空に、大造が白の大蛇に、与吉が黒い大蛇に乗って、はげしくいなづまを光らせながら、立岩山の上空に飛んできました。青空は急にくもって、大おんきょうとともに、白と黒の大蛇がげきとつしたかと思うと、大つぶの雨がふり出して田畑をうるおして、万物はよみがえりました。人々はなみだを流して喜び、大造と与吉が立岩山のお使いの大蛇であったのだろうかと気がつきました。

 みんなで、与吉と大造の住みかを見に行きましたが、どちらも一面の岩山でありました。それからは、この地にふたりのすがたを見かけなくなって、木を切る音も、石をころがす音もえいきゅうにしなくなったということです。


資料提供/神山町成人大学講座
協力/NPO法人グリーンバレー

さし絵
池田 マキコさん

ことば

開こん

土地を切りひらいて田畑を作ること

白ざさ

お米

黒ざさ

黒もち米

カラつゆ

つゆのきせつになっても、ぜんぜん雨がふらないこと

かんばつ

日照りが続いて水がかれてしまうこと

結願(けつがん)

21日間の雨ごいのお祈りが終わる日

大先達(だいせんたつ)

いろいろなものごとについてよく知っていて、人々をみちびくえらい人

おきて

きまり

万物(ばんぶつ)

全てのもの

大蛇(だいじゃ)

大きなヘビ

ポイント

お話の前半では、昔の人びとの山や里でのくらしぶりがよく分かります。そして山に住む二人の男たちは、いつでも人々のためにいっしょうけんめい仕事をしてささえただけでなく、里の大ピンチをすくいました。今、世界にはいろいろな理由でこまっている人々がたくさんいますが、自分だったら、どういう人々のビンチを救えるかを考えてみましょう。


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